溪さんへの手紙 3

溪さん、久しぶりにお便りします。今日はお詫びとご報告です。
由布院美術館はあなたのファンと象設計集団設計の建物のファンの方々に惜しまれながら、今年3月末日をもって閉館致しました。続けることが出来なくてごめんなさい。ゆふいんは朝霧で雲海の中に沈み、その神秘的な美しさが有名ですが、これは残念ながら、絵の保存にはあまりに厳しい環境で、いつかはこの日を迎えることは覚悟していました。20年経った今、もはや限界と判断しての決断でした。
佐藤溪の絵はどうなるの?とファンのみなさまから聞かれました。ご安心下さい。あなたの作品は別府の聴潮閣内に新しく「佐藤溪美術館」として甦ります。再びみなさまに見ていただき、今後も普及に努めます。良かったでしょ。

溪さん、私、この夏に、ドイツ中央部の小都市カッセルで5年に1度開かれる国際的現代芸術のフェスティバル「ドクメンタ」に行ってきました。その他気ままに美術館巡りもして来ました。その結果、感じたこと。溪さん、あなたの絵は世界の一流画家に引けを取ってはいませんでした。やっぱりあなたは素晴らしい。

今、別府現代芸術フェスティバル2012「混浴温泉世界」と「ベップ・アートマンス2012」が同時開催中です。まちをアートで活性化させようと頑張っています。
新「佐藤溪美術館」も間もなく仲間入りします。

ほんのり色づき始めた庭のもみじを愛でながらのお便りでした。

2012年10月吉日
佐藤溪美術館 館長
高橋鴿子